「地中海」

2015年、イタリアやギリシャを目指して、小さなゴムボートで地中海を渡る難民や移民の姿が頻繁に報道されていました。その、彼らが渡った「地中海」。

先日観た、「チャンブラにて」と同じカルピニャーノ監督の作品です。昨年のイタリア映画祭で上映されて、見逃していたもの。


主人公の故郷はブルキナファソ。ブルキナの状況や、映画に挿入される断片からすると、迫害や紛争が理由ではなくて、よりよい生活、よりよい人生を求めての船出だったのかなあと思います。

でも、貧しいブルキナより、命がけの旅路より、もっと地獄の底なのが欧州での生活という、いつも思うけど、やりきれない現実です。

ブルキナでなく戦地から逃げてきた人にとっても同じことだから、なおさらです。

主人公の移民たちを異質なもののように描くわけでもないし、排斥するイタリア人を一方的に悪者に描くわけでもないし、複雑なのを複雑のまま描いてるのがいいなと思う。それは監督の父がイタリア人、母がブルキナ人、というのもあるのでしょうか。


自分の可能性を試したくて田舎から東京に出てくる人、日本を飛び出してニューヨークで起業する人、なんていうのは華々しく取り上げるのに、貧しさから抜け出そうとする人には、世の中はどうしてこんなに厳しいのでしょう。


『地中海』Mediterranea

2015年、イタリア

監督:ジョナス・カルピニャーノ

0コメント

  • 1000 / 1000