約4か月間にわたり町を占拠していたISから解放された、シリア北部の町・コバニ。
ISによる殺戮や、ISとクルド人民防衛隊(YPG)との激しい戦い、それを支援するための連合軍による空爆。解放されたとはいってもまさに瓦礫の山と化した町で、ラジオ局を立ち上げて放送する大学生を主人公にしたドキュメンタリーです。
タイトルやちらしの明るさとは裏腹に、のっけから残酷な現実を見せつけられます。
そうか、あれだけISが人の首を斬りおとし、それからあれだけ激しく空爆されたのだから、復興の第一歩として瓦礫を片付けようと思えば、まず夥しい遺体を掘り出し、集め、埋葬するところから始まるんだな。
あの白くすらりとした片足は若い女性のものだろうか。首だけだったのは斬首された青年だろうか。
コバニに限らず、シリアにも限らず、戦争のあるところ、子どもたちはあの光景を日常的に目にして、その中には家族や友達の遺体もあったかもしれないし、自分自身が崩れた建物の下敷きになって助け出されたかもしれないし、そんな経験をしています。
コバニからISはいなくなっても、町は瓦礫と遺体と不発弾と地雷にまみれ、国はいまだに戦闘が止まない。
2015年当時、難民が戻っていった町の映像を見て、復興までのあまりに長い道のりを思って、気が遠くなったものです。それでも人は町を建て直す。
映画冒頭のあの光景があったからこそより強く、町を再建しようとする人々のささやかな一歩一歩が尊く感じられました。
『ラジオ・コバニ』Radio Kobani
2016年、オランダ
監督・脚本:ラベー・ドスキー 出演:ディロバン・キコ
2018年5月12日(土)公開開始
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