『女は二度決断する』

講演の原稿に打ち込むぞ、と昨日書いたわりに、それより前に締切の迫った連載原稿に今日は追われました。といってもたった2時間。疲れてもいたし、午後は映画を観に行ってしまったのです。

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舞台はドイツ。ヒロインは、トルコ系移民の夫と一人息子を、爆弾テロで突然失ってしまう。移民同士の争いと片付けられそうになったが、ネオナチの2人が逮捕され、裁判にかけられる。その行方と、裁判の結果がもたらしたものは――。


移民はなぜいつの世も、これほどに憎まれ、排斥されるのだろう。どこの国であっても変わりがない。日本だとて同じだ。

欧米の映画を見ると、どの時代も、差別され、蔑まれる存在としての移民が、当たり前のように映りこんでいる。古いアメリカ映画なら、それはイタリア移民だし、今ならメキシコ人だし、イギリス映画ならパキスタンやインドからの移民、大陸側だとしばらく前は東欧からの移民が目立っていて、今はシリア難民かな。完全にわたしの観た映画の範囲ですが。


最後まで息詰まる映画です。主演のダイアン・クルーガーの魅力が、なんとか見続ける勇気をくれるというくらいに。アキンが、現代の社会にとって大事なことを投げかけてくれているのはわかる。だけどあの結末はどうなのか……と思ったけれど、映画を見てすっきりしておしまい、なんてことにはさせないのだから、それも大事なことかもしれない。


監督のファティ・アキンは、両親がトルコからの移民で、自身はドイツで生まれ育った人です。これまでもその出自を背景にした重いテーマの作品が多いです。前回見た『消えた声が、その名を呼ぶ』(2014年)は、100年前にトルコで起きたアルメニア人虐殺(トルコは否定している)をテーマにした、これも、それは凄惨な作品でした。映画館で観たのは海外出張から帰った直後だったのですが、出張中に取材で人々から聞いた体験談とそっくりでした。人間は変わらない。


『女は二度決断する』Aus dem Nichts

監督:ファティ・アキン

2017年、ドイツ



I will fight against a cruel world tomorrow. Meanwhile, I need peace of mind.


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